食器はその国の食文化に合わせて発達する。例えば、ごはんにお味噌汁、それにおかずという食文化を持つ日本で発達した「箸」は、ステーキを食べる目的にはまったくそぐわない。

一方、ステーキを食べるために最適化されたフォークやナイフは、わかめや納豆などを食べるにはとことん不向きだ。


いま欧米では和食ブーム。かつてのように、鮨やすき焼き、それにトンカツといった海外でも定番の和食だけでなく、よりディープなメニューにまで手を伸ばす人が増えてきている。だが、そのような人にとって、箸を使った食事はかなりハードルが高い。すき焼きの肉や鮨ならつかめても、肉じゃがのジャガイモや玉ねぎ、それにトッピングのグリンピースを箸でつかむのは無理という人が多いのだ。

ニカラグア出身の Michel Ina さんは、そのような人でも使える箸「StikChops」を開発、米国で特許を取得した。


箸を正しく使うには、下の箸を薬指と親指で固定。上の箸を中指と人さし指で挟んで上下に動かす必要がある。だが、“右手にはナイフ1本”という文化で育った外国の人にとって、片手で2本の棒を操るというのは、日本人が想像する以上に難しい。

「まるで、楽器の訓練をしているようだ」

そう語った米国人もいたほどだ。


「StikChops」は、この「片手で2本の棒を操る」という困難を解消したお箸。上下の箸が天の部分で繋がっているので、どちらかの箸を落とすことはない。また、天の部分はバネになっているので、外国人にとって最も困難な「上の箸を挟んで上下に動かす」動作は、「上の箸を下に押し込む」動作に簡略化される。これなら通常の箸よりも、習得は楽だろう。


また、「StikChops」を使い続けた後に一般的な箸の練習をすれば、最初から普通の箸にチャレンジするよりずっと楽に箸使いを身につけられそうだ。「StikChops」はもしかしたら、日本人だけど大人になっても正しく箸を使えない人の、練習器具としても適しているかもしれない。